ドラえもん論~ラジカルな弱さの思想~を読んだ感想

2021年2月10日

日本人なら知らない人はいないであろう「ドラえもん」。

ドラえもんが誕生したのは50年前の1970年です。

長年にわたり、子どもから大人まで夢中にさせるその秘密を、独自の視点で解いた本が発売されました。

今回は「ドラえもん論~ラジカルな弱さの思想~」を読んだ感想を書いていきます。

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ドラえもんの歴史

ドラえもんは、誰もが知っているお話ですが、簡単にご紹介します。

ドラえもんは、未来からやってきたネコ型ロボットのドラえもんと、勉強もスポーツも苦手な小学生、野比のび太くんの生活を描いた物語です。

原作者は藤子・F・不二雄さんです。

当時、子ども向け雑誌の「よいこ」「幼稚園」「小学校1年生」「小学校2年生」「小学校3年生」「小学校4年生」の6つの雑誌で、それぞれ1月号からスタートしました。

雑誌の対象年齢が違うので、漫画のコマ割りや言葉遣いも書き分けられました。

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雑誌に連載されたお話の中から、藤子・F・不二雄さんが選んだものをまとめて、単行本として1974年から1976年まで、全45巻が刊行されました。

累計販売数は8800万部を突破し、今もなお伸び続けています。

中でも第1巻にも関しては、発売から45年にわたり、およそ5か月の1度のペースで重版を続けています。

「ドラえもん論~ラジカルな弱さの思想」の内容

「ドラえもん論~ラジカルな弱さの思想」では、子どもから大人まで長く愛される理由は、登場人物に込められた弱さにあると言います。

のび太くんは、頭が悪く、運動もできない、弱くて怠け者で、いじめられてばかり。

そのくせ、ドラえもんから便利な道具を借りて、インチキをします。

しかし、そんなのび太くんに、人はなぜか惹かれてしまうのです。

著書内ではドラえもんの物語に登場したシーンをピックアップしつつ、なぜ惹かれてしまうのかが書かれています。

「のび太の結婚前夜」から感じるのび太の弱さと良さ

このお話では、 将来しずかちゃんと結婚できるのかを、のび太くんがタイムマシンで未来に行って 、直接確かめるというお話です。

のび太くんとの結婚を不安に思ったしずかちゃんに、しずかちゃんのパパが言った言葉が取り上げられています。

のび太くんを選んだ君の判断は正しかったと思うよ。

あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。

ドラえもん「のび太の結婚前夜」より

のび太くんは、勉強も運動もできない。
顔もイマイチで他人に嫉妬する。

しかしのび太くんは、他人への思いやりや共感を失わず、その思いは自分の敵である存在に対しても変わらないのです。

それ故に、のび太くんは失敗するし、成功もある。
それがのび太くんの弱さであり、良さであると書かれています。

「りっぱなパパになるぞ」から感じる大人の弱さと良さ

のび太くん以外にも藤子・F・不二雄さんは、私たち大人の弱さを書いていると、著者は言います。

それは「りっぱなパパになるぞ」の回のエピソードについて書かれています。

いつも酔っぱらって帰宅し、欲しいものを買ってくれないパパ。

そんなパパに対して、「僕はパパみたいにはならない」と強く思うところから物語は始まります。

のび太くんは、自分がどんな素晴らしいパパになっているかを、未来に行って確かめます。

しかし、未来にいたのは、同じようにだらしなく酔っぱらい、子どもが欲しいものを買ってあげないパパでした。

がっかりしたのび太くんに、パパにのび太くんが言った言葉があります。

大した努力もしないで、ある日突然えらい人になれると思う?
失敗して反省し、また失敗しては反省し…その繰り返しの毎日さ。なおったのは近眼だけ。

ドラえもん「りっぱなパパになるぞ」 より引用

その姿に落ち込む子どもののび太くんでした。

しかし、パパになったのび太は、

そうがっかりするなって。少しずつでもマシにはなってきてるんだから。
家族のために頑張ろうという気持ちはなくしていない。

ドラえもん「りっぱなパパになるぞ」 より引用

それを聞いて現代に戻ってきたのび太は、毎日は頑張れないから、1日おきにでもやれる範囲で頑張ると決心を改めます。

著者は、そのパパになったのび太の姿を、大人の弱さであり、良さだといいます。

自分は、立派で素晴らしい大人に一生なれないとわかっているのです。

しかし、試行錯誤の努力によって、人生は少しずつマシになっていく。

そう信じることが、大人の弱さであり良さだと書かれています。

「のび太と鉄人兵団」で感じる失敗を繰り返すこと

鉄人ロボットの集団が、自分の世界の平和を守るために、自分たちより能力の低い人間を侵略する物語です。

その物語では、鉄人ロボットの少女が、人間であるしずかちゃんに、自分たち鉄人がどういう歴史を歩んできたかを語ります。

いかに鉄人が素晴らしいか、そして愚かな人間を侵略するという話をします。

それを聞いたしずかちゃんは言います。

まるっきり人類の歴史を繰り返しているみたい。

神様もがっかりなさったでしょうね。

映画 ドラえもん のび太と鉄人兵団 より

もちろんロボットの少女は怒ります。

しかししずかちゃんは、人間ではない存在の地底人もロボットも、みんな失敗を繰り返してきたと伝えます。

結局、のび太くんもロボットも私たち大人も、みんな失敗を繰り返すということを、著者は伝えています。

著者は、ドラえもんのお話の魅力は、失敗を繰り返すことが悲しいことではないところだと書いています。

失敗を繰り返しても少しずつ前に進んでいること、前に進もうとする人がいることを教えてくれる。
そこが失敗を繰り返す良さだと書かれています。

「ドラえもん論~ラジカルな弱さの思想」を読んだ感想

私がこの本を読んで感じたことは、人間は誰もが弱いということです。

しかし、大事なのは自分の弱さを受け止められること、そして再び前に進むか、進まないかが重要であると感じました。

「ドラえもん論~ラジカルな弱さの思想」では、それが50年前であろうが、便利になった現代であろうが変わらないということを教えてくれました。

この本の中で、著者がのび太くんについて論じているのを読むと、のび太くんという人物が、どこか憎めないと感じると思います。

またのび太くんに対して、どこか自分にものび太くんのような弱さがあると共感します。

あなたも「ドラえもん論~ラジカルな弱さの思想」を読み、著者が書くドラえもんやのび太くんの弱さを、読み解いてみてください。

あなただけが感じる「のび太力」が、そこにあるはずです。

のび太くんのように、弱さを受け入れましょう。
そして「もうちょっと頑張ってみようかな」と、100%完璧ではない未来に少し近づいてみませんか?